歌舞伎をやっているわけじゃないんですが、渡辺保氏の「歌舞伎」を読んでいます。
いまここに、一人の工匠がいて、工匠と私たちの間に、工匠の芸がある。わたしたちの前にあるのは決して煙草盆ではない。煙草盆しか目に入らなければ、その人は芸とは無縁の人である。しかしそこに芸というものがあったとして(芸は決して観念ではない。はっきり目に見えるものであり、煙草盆よりもはるかに確実な実在である。要は見る事ができるかできないか。見る者の能力でしかない。)、その芸を規定するものは、一方で如泥の「生活の仕方」つまり人間としての生き方であり、一方で如泥の「仕事の仕方」つまり創造の能力だと言うのである。芸は工匠の手の内にある。その手の動きを支える論理は、生活と仕事の二つにしてそこにしかない。この石川淳の指摘が重要である。芸は、人生いかに生くべきかと、どうしたら腕を磨くことができるかということへの絶えざる問いのうちにある。
(渡辺保/「歌舞伎」より)
日々の生活と舞台稽古の間を行き来する今の自分としては、腑に落ちる言葉の数々。
沢山の学びと発見が詰まっています。
歌舞伎だけでなく、芸能全般に興味のある方にも、お勧めの書物です。
なお、渡辺保氏の新著「身体は幻」では、山海塾主宰の天児牛大についても書いて頂いています。
是非、読んでみて下さい!
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